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初めて手に入れたアフリカ現地盤 フェラ・クティ [西アフリカ]

Why Black Man Dey Suffer.JPG   Why Black Man Dey Suffer_Back.JPG

前回、日本に初めて輸入されたアフリカ現地プレスのレコードという話題で、
ケニヤ盤のお話をしましたけれど、ぼくが初めて手にしたアフリカ現地プレスのレコードは、
それよりももっと前の高校3年生の夏休みでした。

誰のレコードかといえば、これがフェラ・クティのナイジェリア盤だったんですよねえ。
フェラが歴史的傑作『ソンビ』を発表する一年前の76年のこと。
手に入れたのは、71年作の“WHY BLACK MAN DEY SUFFER” です。
政治的な歌詞が過激すぎるとデッカが発売を拒否し、
アフリカン・ソングズから発売されたといういわくつきのアルバム。

もちろんそんなことは当時知るよしもなく、
フェラ・クティという名前じたい、まだ日本では知られていなかった時代のお話であります。
首輪をかけられた黒人奴隷を戯画化した強烈なジャケットに、
なんだこれ?と引き抜いたんでした。

見つけたのは忘れもしない、下北沢の駅前のビルでやっていた
中古レコード・セールの、とあるダンボール箱の中。
誰も買いそうにない、オーディオのサウンド・チェック用レコードや、
教則レコードといった雑多なレコードがひとまとめに放り込まれた中にあった1枚でした。
アフリカのレコードなんて訳のわかんないものはその他ガラクタと一緒って感じで、
800円というテキトーな値段が付いてました。

ぼく自身フェラ・クティという名前は、
ジンジャー・ベイカーと共演したアフリカのミュージシャンとして知っていた程度で、
実際にフェラ自身の音楽を聴いたことはまだありませんでした。
いや、ぼくばかりじゃなく、76年当時、ジンジャー・ベイカーとの共演盤以外で、
フェラ&アフリカ70を聴いたことのある日本人なんて、まずいなかったんじゃないかなあ。

今思うと、このレコードと出会えたのは運命的でしたね。
なんでかといえば、その日下北沢にいたのは、友達との待ち合わせだったからなんですが、
待ち合わせの時間を間違えて1時間も早く着いてしまい、
しかたなく駅前でやっていたレコード・セールを時間つぶしに眺めていたんですよ。

高校生の頃は、まだ中古レコードを買う習慣がなかったので、
レコードを買う気などさらさらなく、完全にひやかし気分。
ロックやジャズといったまっとーな箱でなく、「その他」みたいな箱までのぞいてたのは、
時間つぶしだったから以外のなにものでもありませんでした。

考えてみれば、このレコードが初めて手に入れたアフリカ現地盤ということだけでなく、
初めて買った中古盤でもあったんですね。書いていて今、気付きました。
新品じゃなきゃ嫌なぼくでも抵抗なく買えたのは、新品同様のミント盤だったからで、
想像するに、日本企業のナイジェリア駐在員がナイジェリア土産に買ってきたレコードで、
ロクに聞かないまま売りとばしたものだったんじゃないのかしらん。

もしあの時、待ち合わせ時間を間違えなければ、このレコードと出会うこともなかったわけで、
初のアフリカ現地盤がナイジェリア盤で、フェラ・クティだったというのも、なんだか運命的。
この1枚がきっかけとなって、アフリカ音楽探求の旅に出ることになったんですからねえ。

フェラ・クティのレコードが日本でようやく聞けるようになったのは、
アメリカのエディション・マコッサ盤がどっさり入ってきた翌年の77年のこと。
音楽誌にフェラ・クティの記事が載るようになったのもちょうどこの頃で、
「ザ・ブルース」77年9/10月号の日暮泰文さんの記事や、78年1/2月号の中河伸俊さんの記事、
「ニューミュージック・マガジン」77年12月号の藤田正さんの記事は、
むさぼるように読んだものです。

とはいえ、日本で手に入るのはアメリカやイギリス・プレスのレコードばかりで、
現地ナイジェリア盤を手に入れるなんぞ、夢また夢。
ガラクタ品のダンボール箱で見つけたナイジェリア盤の“WHY BLACK MAN DEY SUFFER” は、
ぼくのレコード棚のなかでも、何物にも代えがたい宝物となったんでした。

[LP] Fela Ransome Kuti & The Africa '70 "WHY BLACK MAN DEY SUFFER" African Songs AS0001 (1971)
コメント(2) 

コメント 2

ジョアン・ジルベルト・ジル

やはり聖書「ポップ・アフリカ700」の著者は違う!運命ですね。ところで私は「ポップ・アフリカ700」改訂版が読みたいのです。 昔、出版元にリクエストしたんですが、予定なし。電子版なら検討中とのことでした。ご予定は?
by ジョアン・ジルベルト・ジル (2013-03-26 20:38) 

bunboni

ありがたいコメント、恐縮です。
改訂版のリクエストがアルテスパブリッシングにどどっと寄せられるようであれば、考えていただけるかもしれませんねえ。著者は「ポップ・アフリカ800」でもオッケーなんですが。
ところで、ハンドル・ネーム、すばらしいですね。
by bunboni (2013-03-26 20:54) 

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