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古層で繋がるハンガリーと日本 サローキ・アーギ [西・中央ヨーロッパ]

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ハンガリーの歌姫サローキ・アーギがやってきました。
コットンクラブでたったひと晩だけのための来日なんて、なんかもったいない気がしますけれど、
これは見逃すわけにはいかないと思ったのは、ぼくだけじゃなかったんでしょう。
ファーストもセカンドもソールド・アウトしたらしく、会場ぎっしり満員でありました。

ぼくはこの人の08年作“A VÁGY MUZSIKÁL” が大好きなんです。
ハンガリーの女優兼歌手として活躍した、カタリン・カラーディの曲集といいますが、
カタリン・カラーディという人も知らなければ、ここで歌われている曲の一つも知らなかったので、
サローキのどこまでも自然体な、子守唄のような歌のたたずまいに、やられてしまったんでした。

で、楽しみにしていた5月24日、セカンド・ショウ。
ピアノ、ベース、ギター、ドラムス、テナー・サックス、トロンボーンの6人がスーツ姿で現れ、
「A列車で行こう」をいきなり始めたのには、腰砕け。あまりに平凡な演奏に戸惑っていたら、
1曲目が終わったところで、鮮やかな朱のロング・ドレスを着たサローキが登場、
CDそのままの安定感のある歌いぶりで、
“A VÁGY MUZSIKÁL” のレパートリーを中心に歌ってくれました。

メンバーはピアノとドラムスをのぞき、“A VÁGY MUZSIKÁL” で演奏していたのと
同じミュージシャンたちで、演奏はジャズ・フォーマットながら、
サローキはいっさいフェイクを使わないし、ジャズ・マナーなところはまったくありません。
40年代のハンガリアン・ジャズのスタンダードと紹介して歌った曲もありましたけれど、
サローキをジャズ・シンガーと呼ぶのは、ぼくには違和感があるなあ。

ベシュ・オ・ドロムで伝承曲を歌っていたからといっても、
トラッド(フォーク)・シンガーだというわけでもなく、
知的なポップ・シンガーというのが、彼女の立ち位置だと思います。

意外だったのは、ファドを1曲(ミージアの“Paixões Diagonais”)歌ったこと。
ハンガリーのメロディに似ているのでという前振りで、ギターのみをバックに歌ったんですが、
それまでずっとストレイトに歌っていたのが、突然こぶしを使って歌い出したのは新鮮でした。
とはいえ、ファドは彼女の持ち味とは違って、ちょっと似合わないなあと思っていたところ、
ハンガリー民謡をア・カペラで聞かせた時のこぶし使いには、ウナらされましたね。

複数の増音程を取り入れたハンガリー音階独特のメロディは、
オリエンタルな雰囲気を濃厚に醸し出して、そのこぶし使いも
ファドのように大きく回すのではなく、日本民謡に通じるものを感じさせました。
これには観客一同心を打たれ、ひときわ大きく長い拍手が送られました。
サローキも感無量といった表情で、胸に手を当て深々とお辞儀をしていましたね。

さらに続けてのオドロキは、日本の有名な曲を歌うので、
みなさんもどうぞ歌ってくださいねといって歌い出した「さくらさくら」。
歌い出しのメロディを間違え、歌い直してからの日本語の発音と
イントネーションが完璧だったのには、驚愕。
こちらではこぶしを使わず、原曲に忠実な歌いぶりで、
「さくらさくら」って、こんないいメロディだったっけかと、目うろこ。

マジャール人がアジア系だということで、ハンガリーと日本の類似性がよく指摘されますけれど、
マジャールの民謡は5音音階が多いところも、
日本とハンガリーが古層で繋がっているんじゃないかという妄想をかきたてる瞬間でした。

Szalóki Ági "A VÁGY MUZSIKÁL" FolkEurópa FECD041 (2008)
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