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パリジェンヌになったディアスポラ ジュリア・サール [西・中央ヨーロッパ]

Julia Sarr  NJABOOT.jpg

パリ発の新世代アフロ・ソウル・ジャズ。
ジュリア・サールの3作目を数える新作です。
過去2作はスルーした記憶があるんですが、
今作には、世界各地から誕生する、新世代ジャズ・ヴォーカリストたちと
共振するものを感じて、反応しちゃいました。

セネガル、ダカール生まれのジュリア・サールは、
パリを拠点に、ユッスー・ンドゥール、サリフ・ケイタ、ウム・サンガレ、
ロクア・カンザといったアフリカの大物アーティストたちの
バック・コーラスとしてキャリアを積みながら、ソロ・シンガーとなる野心を秘め、
05年にノー・フォーマットからソロ・デビューした人。

ジュリアの音楽には、ウォロフ語の歌詞をのぞくと、
セネガルのルーツを見い出せる要素がまったくなく、
パリでワールド・ミュージックの作法だけを身に着けた人という、
マイナス評価をしていました。
しかし今作では、そんな身も心もパリジェンヌになったかのような、
幼さの残る華奢な声が、美しく気品のあるサウンドにマッチして、
世界的なジャズ表現とシンクロしたのを感じます。

これは、強靭なグリオの声や、伝統ポップの作法から生み出せない世界で、
ディアスポラだからこそ生み出せる、アフロ・ポップの新たな時代の表現といえます。
ジュリアの歌い口には、現代の女性シンガーに特徴的な性質がはっきりと聞き取れ
正直言えば、それはぼくが「イマドキの」と表現する、苦手な歌い口なんですが
(シルビア・ペレス・クルスとか、ナタリア・ラフォルカデとか)、
R&Bやネオ・ソウルと同時代性だと捉えれば、納得もしようというもの。

プロデューサーのキーボーディスト、フレッド・ソウルが作り出す
洗練されたサウンドは、上質のシルクの肌ざわりを思わせる極上なもの。
ジャジーな鍵盤のハーモニー、うるわしい女性コーラス、
ふくよかにバウンスするタマ(トーキング・ドラム)の打音は、
都会の夜のとばりをたゆたうように奏でられます。
パリに住むアフリカ人女性のリアルと結びついていることが、静かに伝わってきます。

Julia Sarr "NJABOOT" no label no number (2023)
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