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マンタロ渓谷を越えて アリシア・マギーニャ [南アメリカ]

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アリシア・マギーニャは、ペルー、クリオージョ音楽のヴェテラン女性歌手。
クリオージョ音楽名盤中の名盤“VIVA... LA MARINERA” でも1曲歌っていますが、
そこで聞ける美声のソプラノ・ヴォイスは味わいに乏しく、あまり好みの歌手ではありませんでした。

そんなアリシアに対する認識を改めさせられたのは、ウァイノを歌ったこのアルバムがきっかけ。
お祭りの華やかな衣装をまとったアリシアの写真に惹かれて買ったんですけど、
アリシアの声がウァイノとすごくマッチしていて、
ペルー山岳地帯の民俗色豊かな伴奏ともども、すっかり気に入ってしまいました。
最近ウァイノのペルー盤CDがいろいろ入荷していますけど、
このCDは見落とされているらしく、日本に入っていないのが残念です。

アリシアはこのアルバムで、さまざまなスタイルのウァイノを歌っています。
ギコギコ弾くヴァイオリン、ぶりぶり鳴るブラス、硬く太いアルパの弦の響きが
渾然一体となったバンダ・スタイルの、オルケスタ・ティピカ・デル・セントロの伴奏あり、
マンドリンが明るい響きを奏でる舞曲ウァイラスや、
名手ハイメ・グアルディアのチャランゴをフィーチャーして、
ギターとケーナが伴奏をつけるアヤクーチョのウァイノなどなど、
ペルー山岳音楽のショーケース的なアルバムともいえます。

アリシアがウァイノまで歌いこなす人だとは知りませんでしたが、
本人のライナーによれば、6歳の時にはじめてインディヘナとウァイノを知り、
インカの伝統遺産に心惹かれてウァイノを学ぶようになったんだそう。
38年生まれのアリシアが、ウァイノをレパートリーに加えるようになったのが57年、
イエンプサにウァイノを録音し始めたのが68年とのこと。
本作には2000年にアリシアが自作したウァイノ2曲も含まれています。

ジャケットを眺めていると、中央アンデスに位置するワンカヨの美しく豊かな田園風景や、
マンタロ渓谷で繰り広げられるお祭りが目に浮かぶようですね。
あー、行ってみたいなあ。世界には見てみたいところがいっぱいです。
土着のウァイノ特有のかん高い女性歌手の声とも違った、端正なアリシアの歌声は、
クリオージョのレパートリーを歌っている時より、断然魅力的です。

Alicia Maguiña "LA SANTA TIERRA" Iempsa IEM0619-2
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