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カフリンニャの香り デズモンド・デ・シルヴァ [南アジア]

Desomond & The Clan.jpg    Desmond Pays Tribute.jpg

スリ・ランカのバイラといえば、その昔、ニハール・ネルソンとアンタン・ジョーンズの2枚が
日本盤として出たこともありましたが、今ではもう完全に忘れ去られている音楽でしょうね。
90年代のバイラのアルバムは、歌手が誰だろうとバックはみな同じの粗製乱造の典型で、
トリニダッドのソカ同様、熱心に聴く気になれないジャンルのひとつでした。

チープな鍵盤系のサウンドがプロダクションを支配し、
一本調子のビートがひたすら疾走するアッパー系音楽であるところも、どこかソカによく似ています。
ソカはレストン・ポールか、フランキー・マッキントッシュがアレンジした作品ばかりで、
どれも同じサウンドとなっているように、バイラのレコーディングも、バックを務めるのが
ジプシーズとサンフラワーの寡占状態となっていることが、
プロダクションの質を落す原因となっていました。

そんなダメダメなプロダクションの変化に、ぼくが気付いたきっかけは、
バイラのトップ・スター歌手、デズモンド・デ・シルヴァの05年のアルバムでした。
シンセ一辺倒だったサウンドから一転、
アコーディオン、ヴァイオリン、マンドリンといったアクースティックな楽器を使い、
カフリンニャ時代を思わせる南国歌謡のノスタルジックな響きを醸し出しています。
思わず、「そうそう、こういうサウンドで聴きたかったんだよ」と喜んでしまいました。

実はこのCD、代々木公園で恒例になっているスリ・ランカ・フェスティバルでの貰い物。
ゴキゲンなバイラがかかっていた店のオヤジに、「これ誰?」と訊いたら、
「デズモンド・デ・シルヴァだよ!」というので、「いいねー」とかいいながら、
オヤジと一緒にケツ振りながら踊ってたら、オヤジに気に入られて、CDを貰ってしまったんでした。

そして、デズモンドのノスタルジック路線が本格的になったのを感じたのは、
07年に出た『ウォーリー・バスチャン・トリビュート集』でした。
ウォーリー・バスチャンは40年代にコーラス・バイラと呼ばれるスタイルを築いたパイオニアで、
「バイラの父」と称され、いまなおシンハラ人に敬愛されている歌手です。

ちょうど今月号の「レコード・コレクターズ」で、
ウォーリー・バスチャンのヴィンテージ録音集を紹介しましたけど、
そのウォーリーの曲を集めたデズモンドの新作は、
ヴァイオリン、マンドリン、バンジョー、ハーモニカなどの生音をいかしたアンサンブルで、
05年作の路線をさらに推し進めたカフリンニャの香り高いサウンドを聞かせてくれます。
デズモンドもこれまで以上に、コミカルな歌い口でバイラを歌っていて、
デズモンドの代表作と呼ぶのにふさわしいアルバムに仕上がっています。

Desmond De Silva & The Clan "MAL WAGE BAILA" Torana Music Box SPSK2121 (2005)
Desmond De Silva "PAYS TRIBUTE TO THE LEGENDARY WALLY BASTIAN" Maharaja Entertainments 4790238 (2007)
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