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儚げなインドの唄 ミーナ・クマリ [南アジア]

Meena Kumari.JPG

エル・スールの原田さんに教えてもらった一枚。
ミーナ・クマリという名前をぜんぜん知らず、どういう人?と訊いたら、
独立前のインドで天才子役として人気を博し、
50~60年代に悲劇のヒロインを演じた女優兼歌手で詩人でもあった人とのこと。
役どころと同じ不幸な実生活を送り、39歳の若さでアルコール依存症で早世した、
インド映画界の伝説的な悲劇の女王だそうです。

ミーナにはプレイバック・シンガーのような完璧な歌唱力はなく、
その歌いぶりは不安定ともいえるんですけど、
その不安定さが歌い手のぬくもりとして伝わってきて、う~ん、これがいいんですよ。
歌の導入部で語りが入るパートなんか、幸薄そうな声でせつせつと語っていて、
男としては黙っていられなくなりますね。

インドというとすぐ連想してしまうキンキン声とは無縁の、落ち着いた柔らかな声も魅力的。
歌われている曲は、白黒トーキー時代のヒンディー映画音楽らしく、
ウルドゥー語によるしとやかなガザル集で、そのたおやかな歌声に聴き惚れてしまいます。

このアルバムは、ミーナが書いたウルドゥー語の詩に、
大御所の映画音楽の作曲家ハイヤームが曲を付けたものだそう。
ミーナの歌声に寄り添うサントゥールやサーランギなどの控えめな伴奏が、
薄幸な人生を歩んだ悲劇のヒロインを彩り、
その実人生とも写し絵のようになった、儚げな美しさに溢れています。

中高年男性が枕を濡らす、秋の夜長盤がまた1枚増えました。

Meena Kumari "I WRITE I RECITE" Universal CDNF480
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