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清澄なミャンマー古典歌謡の詩情 イーイータン [東南アジア]

Yi Yi Thant  MYANMAR SEINT YINN MYANMAR SHU KHIN.jpg

イーイータンのソロ・アルバム! うわぁ、これは珍しいですねえ。
イーイータンといえば、マーマーエーと肩を並べるミャンマー古典歌謡の大御所。
その名声の高さは十分承知しているものの、
どういうわけだか、これまでソロ・アルバムにお目にかかったことがありませんでした。

イーイータンは、20世紀最高のサウン(竪琴)の名手とされた
インレー・ミン・マウンに可愛がられ、専属の歌手にもなっていた人。
インレー・ミン・マウンの多くのカセット作品に、フィーチャリングされてきました。
国外でもっともよく知られている作品が、インレー・ミン・マウンの死後に
スミソニアン・フォークウェイズが出した、96年録音の
“MAHAGITÁ: HARP AND VOCAL MUSIC OF BURMA” でしょう。

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イーイータンが古典歌謡の歌い手としてファースト・コールだったことは、
海外でミャンマー音楽を紹介するコンピレに、
必ずといっていいほど登場していることでも証明できます。
97年にシャナチーが出した“WHITE ELEPHANTS AND GOLDEN DUCKS”、
11年にサブライム・フリークエンシーズが出した“PRINCESS NICOTINE” にも
顔を出していましたよ。

そんなイーイータンの初めて見るソロ・アルバム、
たった5曲、28分足らずのミニ・アルバムなんですが、いつ出たものなんでしょう。
ピアニストで作曲家のサンダヤー・ラトゥ Sandayar Hla Htut (1936-2000)が
ピアノを弾いているので、90年代録音でしょうか。
00年以降のアルバムでないことだけは確かですね。
5曲中4曲がラトゥの作品で、伴奏はラトゥのピアノのほか、
タヨー(ヴァイオリンに似たミャンマーの古楽器)、太鼓などによる
室内楽風の小編成で聞かせます。

古典歌謡といっても、ロマンティックな恋愛詩を歌ったものなんじゃないかと想像する、
和らいだメロディの佳曲を、イーイータンが清澄な歌声で聞かせます。
1曲目のタイトル曲「ミャンマーのこころ ミャンマーの風景」は、
サンダヤー・ラトゥの代表曲としてよく知られる曲だそうで、
ゆったりとした空気感に、場を清めるような清涼感は、インドにも中国にもない
ミャンマーの詩情を感じずにはおれません。
余計な緊張感を聴き手に強いない、ミャンマー古典の良さをおぼえます。

Yi Yi Thant "MYANMAR SEINT YINN MYANMAR SHU KHIN" M United Entertainment no number
Inle Myint Maung and Yi Yi Thant "MAHAGITÁ: HARP AND VOCAL MUSIC OF BURMA" Smithsonian Folkways Recordings SFWCD40492 (2003)
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