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正統派南ア・ジャズ・ピアニストの世界デビュー ンドゥドゥーゾ・マカティーニ [南部アフリカ]

Nduduzo Makhathini  MODES OF COMMUNICATION.jpg

南ア・ジャズのピアニスト、ンドゥドゥーゾ・マカティーニが、
なんとブルー・ノートから新作を出しました。
ブルー・ノート初の南アのアーティストになったみたいですけれど、
ンドゥドゥーゾ・マカティーニが注目されたのは、
UK新世代ジャズを先導するシャバカ・ハッチングスのジ・アンセスターズに、
ンドゥドゥーゾが起用されたからなんでしょうね。

シャバカ・ハッチングが起用した時にも、ちょっと驚いたんですけれど、
ンドゥドゥーゾのような、どちらかといえば保守的なタイプの
南ア・ジャズのミュージシャンが、国外で評価されることなんてまずなかったので、
意外に思ったのと同時に、すごく嬉しかったことを覚えています。

最近の南ア・ジャズも、世界のジャズ・シーンと同様に、
新しい世代による新感覚の才能がどんどん登場するようになってきていることは、
すでにここでも紹介しましたよね。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2018-05-06
しかしンドゥドゥーゾは、そういった先鋭的なタイプのジャズ・ミュージシャンとは違い、
伝統的な南ア・ジャズの系譜に連なる音楽家といえます。

Nduduzo Makhatini  MOTHER TONGUE.jpg

南アですでに8枚のアルバムを出していて、
ぼくは14年の“MOTHER TONGUE” がすごく好きだったんですけれど、
今回の新作では、この“MOTHER TONGUE” とテナー・サックスとドラムスで
同じメンバーが起用されているんですね(嬉)。

Zimology Quartet.jpg

ンドゥドゥーゾのプレイは、ハーブ・ツオエリの12年の名作や、
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2016-11-24
ジモロジー・カルテットの07年のライヴ盤でも聴いていたので、
ぼくには馴染み深いんですけれど、あらためて説明すれば、
マッコイ・タイナーにもろに感化されたピアノ・スタイルで、
アンドリュー・ヒル、ランディ・ウェストン、
ドン・ピューレンからも影響を受けたといいます。

ンドゥドゥーゾは、敬虔なキリスト教徒の家庭に生まれ育ちました。
父親はギタリスト、母親は歌手で、ピアノは母親から習い、
幼い頃は教会の合唱隊で、ズールー合唱のイシカタミヤを歌っていたそうです。
しかし13歳の時、ズールーの伝統的治療者で占者のサンゴマ(俗にいうヒーラー)の
啓示ウブンゴマを受けて衝撃を受け、精神的な混乱をきたします。
母方の祖母が偉大なサンゴマであったことから、
少年時代のンドゥドゥーゾは、キリスト教とアフリカの伝統宗教の狭間で悩みながら、
サンゴマの奥義を祖母から学んだといいます。

ンドゥドゥーゾの音楽に深い精神性が宿すようになったのも、
そうした宗教体験との関わりがあったからなんですね。
スピリチュアルなブラックネスを表出した
南ア・ジャズのピアニストといえば、ベキ・ムセレクがいますけれど、
ンドゥドゥーゾがベキをメンターと呼ぶのも、むべなるかなです。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2011-01-17

今回ブルー・ノートから出た新作でも、
これまでのンドゥドゥーゾの音楽性をなんら変えることなく、
また、世界向けに何か演出を施すようなところも、
まったく見受けられないところが、とても好感を持てます。
派手さのない地味なピアニストですけれど、
アブドゥラー・イブラヒムから綿々と育まれてきた南ア・ジャズの
正統的な継承派ともいえる人。シャバカ絡みのチャンスをうまく生かして
世界デビューできたことに、祝杯をあげたい気分です。

Nduduzo Makhathini "MODES OF COMMUNICATION: LETTERS FROM THE UNDERWORLDS" Blue Note B003157502 (2020)
Nduduzo Makhatini "MOTHER TONGUE" Gundu GUNDPR001 (2014)
Zimology Quartet "LIVE AT BIRD’S EYE SWITZERLAND" Zimology ZIMCD001 (2007)
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