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ユッスー・フォロワーを脱して パペ・ジュウフ [西アフリカ]

Pape Diouf  Enjoy.jpg

ユッスー・ンドゥールがシーンにカムバックし、
ヴェテランから中堅、若手と入り乱れて、
シーンが活気づいている様子の伝わる、セネガルのンバラ。
あいかわらずCDの流通が悪くて、入手するのが難儀なんですけれど、
少しだけ近作が届きました。

今回のハイライトは、今年出たパペ・ジュウフの5作目となる新作。
これまで見えにくかったこの人の個性が、本作ではしっかりと発揮されましたね。

パペ・ジュウフは、78年ダカールの出身。
セネガル南西部シヌ=サルーム・デルタにオリジンがある家系の、
ウォロフ人グリオの家庭に生まれました。
幼い頃から冠婚葬祭の場で歌い、本格的な芸能界入りをしたのは、
95年にレンゾ・ジャモノへ参加した時で、その後98年にソロ・デビューしました。

パペのアルバムは、手元に11年作“CASSE CASSE” と
14年作“RÀKKAAJU” の2枚があります。
声はいいし、グリオ出身らしい鍛えられたノドも悪くないんですけど
どうもユッスーに似すぎていて、小粒なユッスーという感が否めなかったんですよね。
声じたいが似ているうえに、ハイ・トーンで声を張るところなどは、
もろにユッスーといった感じでした。

今作でも、ユッスーの影響大な歌いぶりは変わっていないものの、
緩急のつけかたに進歩の跡がうかがわれ、
ユッス・フォロワーを脱したパペ自身の個性がアピールされています。

バックは、14年作の“RÀKKAAJU” のメンバーと大きくは変わっていませんが、
ソロ・ギターのクレジットがラミン・フェイ1人から、他の5人に増えたのが注目されます。
曲によってトーンの異なるギターが聞こえてくるのはそのせいで、
なかでも、5曲目のシャープなギター・ソロが一番の聴きもの。
これを弾いているギタリストの名前を、知りたいところです。

リズム・セクションとサバールやタマなどのパーカッションが
一斉に突っ込んできたり、全員がリフをキメる場面など、
小気味よいンバラのサウンドが全編で炸裂していて、胸をすきます。
アルバムの構成も、冒頭スローで始まり、徐々にエンジンを上げていって、
終盤に向け、ビートがどんどん早くなっていく展開も、ドキドキさせられますね。

ちなみに、昨年パペ・ジュウフは、ユッスー・ンドゥールが毎年パリで開く
一大コンサート、グラン・バルにゲストで招かれ、
ファリー・イプパの次に登場し、ユッスーと“Na Woor” を歌ったんだそうです。

Pape Diouf "ENJOY" Prince Arts no number (2018)
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ギリシャのアコーディオン女子 ミレラ・パフウ [東ヨーロッパ]

Mirela Pachou  LIGO CHORAMA.jpg

ギリシャのアコーディオン女子、ミレラ・パフウの2作目が出ました。
ピンクのスカートの裾を持ち上げて微笑んでいたデビュー作のジャケットから一転、
今回は白黒写真で、アコーディオンの鍵盤3か所に、
わずかに色付けしただけのシックなジャケットとなっています。
『小さな色』というタイトルを示しているんですね。

面白い個性の持ち主なんですよ、この人。
オールディーズのセンスで、
スウィンギーにしてロッキンなグリーク・ポップを聞かせてくれます。
ライカも歌ってはいますけれど、ミレラはライカ歌手ではありませんね。
ポップ・ライカも歌う、庶民派ポップ・シンガーというところでしょう。

こういうポジションのギリシャのシンガーというと、
マラヴェヤス・イリーガルことコースティス・マラヴェヤスがいますよね。
ギリシャ語のほか、英語、スペイン語、イタリア語を駆使して、
アメリカン・オールディーズからカンツォーネにタンゴ、スカまで歌っちゃう、
おとぼけシンガー・ソングライター。

チョイ悪なイケメン兄ちゃんといった外見とはウラハラに、
どこかトボけたB級ムードの歌を歌う人で、得難い才能の持ち主なんですが、
ミレラ・パフウもマラヴェヤス人脈の一人なんだとか。
どうりで音楽性もよく似ているわけです。

20070623_中山うり DoReMiFa.jpg

アコーディオンを抱えて、ノスタルジックな歌を歌う女子といえば、
S-KENがプロデュースしていたデビュー当初の中山うりがなんといっても秀逸で、
いまだに『ドレミファ』をよく聴き返すんですけれど、
カラッとした地中海の明るさを感じさせるミレラ・パフウには、
ほがらかな味わいがあって、これまた愛すべき1枚となりそうです。

Mirela Pachou "LIGO CHORAMA" Ogdoo Music Group no number (2018)
中山うり 「ドレミファ」 ソニー SICL165  (2007)
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リズムの鬼 カミーユ・ベルトー [西・中央ヨーロッパ]

Camille Bertault  PAS DE GÉANT.jpg

すごいリズム感の持ち主ですね。
フランス語でこんなにキレッキレのディクションで歌える人って、
ブロッサム・ディアリー以来じゃないかしらん。
ソフトに歌っても、リズムのキレがあるところに、高い才能が示されています。

びっくりさせられた主は、フランスから登場した、
新進ジャズ・ヴォーカリストのカミーユ・ベルトー。
おととしサニーサイドから出したアルバムが、
すでに一部で話題になっていた人だそうですが、ぼくは本作で初めて知りました。

サニーサイド盤ではスキャット・ヴォーカルが話題になったとのことで、
本作でもスキャットやヴォーカリーズを華麗にキめていますが、
そうした派手なパフォーマンスを可能としている、
この人のリズム感とディクションの確かさの方に、注目したいんですよね。

本作は、自作曲に加えて
ジョン・コルトレーン、ウェイン・ショーター、ビル・エバンスのジャズに、
ラヴェルやバッハのクラシック曲、セルジュ・ゲンズブール、ジョルジュ・ブラッサンス、
ブリジット・フォンテーヌのフランス語曲を取り上げています。
レパートリーによって、ディクションを使い分けているところは、
言葉の響きに自覚的な人ですね。大胆にして繊細な発声の表現力に感じ入りました。

タイトル曲は、
コルトレーンの「ジャイアント・ステップス」のヴォーカリーズ・ヴァージョン。
その鮮やかな料理ぶりを聴いていて、思わずカミーユに、早口ショーロ・ヴォーカルの
アデミルジ・フォンセカを聞かせてみたい、なんて思っちゃいました。
ぜったい興味を持って、チャレンジしてくれそうな気がします。

Camille Bertault "PAS DE GÉANT" Okeh/Sony Music 88985422332 (2018)
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たゆたうハーモニー ゆるぎないグルーヴ cero [日本]

Cero POLY LIFE MULTI SOUL.jpg

すごいアルバム作っちゃったな、cero。

シティ・ポップとして括られているのに違和感を持ちつつも、
彼らが生み出すサウンドは、ずっと気になっていました。
ネオ・ソウル~ヒップ・ホップ~ジャズを参照しまくった
前作の『Obscure Ride』は、かなり前のめりになったもんです。

そして、今作。
豊かなハーモニーに独創的なコード展開という音楽性を深めるばかりでなく、
リズムの解釈、グルーヴの獲得が、とんでもない領域に達しちゃってますよ。
クラブ世代のビート感覚を根っこに持ちながら、
ヒップ・ホップのリズムを人力に置き換えた、
現代ジャズのゆらぎ感を咀嚼するだけでなく、
さまざまなクロス・ビートが顔を出し、ラテンやアフリカ音楽を学んだ痕跡もくっきり。

多層的に音楽を取り込みながら、それをミクスチャーするのではなく、
それぞれの層をくっきりと露出させているところが、すごく魅力的なんだな。
このリズム、このサウンド、いったいどこから参照してきたんだろうと思わせながら、
そうした多様な要素を、整理したり、まとめたりするのではなく、
ばぁーっと放り出して、ライヴ演奏したようなエネルギーを感じさせるところが、
すごい魅力的なんです。スタジオ・ワークだけで作ったら、こうなりませんよねえ。

ceroのサウンドに惹きつけられているぼくは、
インスト・ヴァージョンのボーナスCDが付いた初回限定盤を買いました。
個人的には、文学的な歌詞がカンベンてなところもあるので、
インスト・ヴァージョンの方が、テイストに合います。
とはいえ、全部が全部インストの方が良いわけではなく、
演奏だけだと物足りなく聞こえる曲もあり、
声の響きがサウンドの一翼を担っている証拠ですね。

今作の白眉は、
ムーンチャイルドとアフロビートを溶け合わせたような「魚の骨 鳥の羽根」。
そしてラストのタイトル・トラックのハウス・ビートに、
サンバのパンデイロが絡んでくるところで、
やもたまらず立ち上がって、踊り出してしまいます。

cero 「POLY LIFE MULTI SOUL」 カクバリズム DDCK9009 (2018)
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マケドニアのコンテンポラリー・フォーク ルボイナ [東ヨーロッパ]

Luboyna & Ismail Lumanovski.jpg

両腕を思いっ切り伸ばして、深呼吸したくなるような、すがすがしさ。
オープニングのゆったりとおおらかなリズムにのせて歌う、
マケドニアの女性歌手ヴェラ・ミロシェフスカののびやかな歌唱に、
陶然としてしまいました。

マケドニアといえば、エスマやコチャニ・オーケスターに代表されるとおり、
ジプシー音楽のイメージが強いお国柄。
ところが、この曲にはそんなジプシーの猥雑な臭みはまったく感じられず、
抜けるような空の青さと、広々とした丘陵を思わせるメロディの美しさに胸を打たれます。
おそらくこれは、南スラブ系の民謡をベースに創作された曲なんでしょうねえ。

Vanja Lazarova.jpg

ああ、そういえば、思い出しました。
マケドニアの南スラブ系民謡歌手として世界的に知られた人で、
ヴァンヤ・ラザローヴァという女性歌手がいましたね。
“MACEDONIAN TRADITIONAL LOVE SONGS” で
素晴らしい歌声をきかせてくれたのが忘れられませんが、
ヴェラ・ミロシェフスカの歌いぶりは、まさにヴァンヤゆずりといえます。
調べてみたら、ヴァンヤは17年3月に亡くなられていたんですね。
86歳だったそうです。

さて、話をアルバムに戻して、2曲目からはジプシー色の濃い音楽も登場して、
アルバム名義にも添えられた、
名手イスマイル・ルマノフスキーのクラリネットも大活躍します。
バルカンらしい変拍子リズムあり、南スラブのフォークロア色濃い曲ありで、
マケドニアという複雑な民族と政治状況に揺れ続けてきた歴史のなかで、
文化混淆してきた音楽が、芳醇な香りを放っていますよ。

マケドニアは、ユーゴスラヴィア連邦の解体によって91年に独立した新興国で、
南スラヴ系のスラブ人種が多数を占める現在のマケドニア人は、
古代マケドニア王国と直接の民族的な関係はありません。
マケドニアと名乗る由来がないにもかかわらず国名にしたことで、
古代マケドニア王国の系譜を持つギリシャと鋭く対立し、
今なおその火種が続いていることは、よく知られているとおりです。
前に「南スラブ系民謡」という言い方をしたのも、その複雑な歴史事情を考えると、
「マケドニア民謡」と呼ぶには、ためらいをおぼえずにはおれなかったからでした。

このルボイナというマケドニアのグループは、
そんな複雑な民族事情を、豊かな文化混淆にかえたサウンドを実現していて、
ブルガリアのコンテンポラリー・フォークと共通した音楽性を持つバンドといえそうです。
ヴァイオリン、チェロ、カーヌーンの弦楽アンサンブルを、
レクやダルブッカなどのアラブ由来の打楽器が鼓舞するアンサンブルも聴きものなら、
ナイチンゲールの異名を持つ紅一点のヴェラ・ミロシェフスカの歌いぶりが、
なんといってもこのバンドの最大の魅力でしょう。
地中海世界に開かれた歌い口で、ギリシャやトルコと近しい現代性を感じさせます。

Luboyna & Ismail Lumanovski "SHERBET LUBOYNA" Bajro Zakon Co BZC007 (2015)
Vanja Lazarova "MACEDONIAN TRADITIONAL LOVE SONGS" Third Ear Music 099/1 (1999)
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デトロイトの漆黒の夜 アンプ・フィドラー [北アメリカ]

Amp Fiddler  AMP DOG KNIGHTS.jpg

今回で4作目?
え、たったそれだけしか、ソロ・アルバム作ってなかったんだっけか。

アンプ・フィドラーは、80年代からPファンク軍団の一員として活躍し、
80年代末には地元デトロイトの若いラッパーを支援して、
J・ディラをフック・アップし、90年代にはセオ・パリッシュやムーディーマンなど
ディープ・ハウス・シーンともつながっていた、デトロイト・シーンの重鎮。
そんなイメージがあっただけに、これほどの寡作家だったとは、意外や意外。

昨年のディスコ・ブギーなファンク・アルバムはパスしてしまいましたけれど、
今回はムーディーマンがトータル・プロデュースし、
なんと故J・ディラのトラックを使った曲が呼び物となっていると聞いては、
素通りするわけにいきません。
さらに今作では、アンプの兄バブズ・フィドラーも参加しているとあっては、
兄弟デュオのミスター・フィドラーでアンプを知った者には、
ますますココロ惹かれてしまいます。

オープニングのラジオのジャイヴ・トークから、ぐいっとつかまれてしまいましたよ。
Pファンクからディープ・ハウスを横断しつつ、
全体にはムーディーマンらしい洗練されたシルキーなサウンドでくるんでいて、
官能的なグルーヴに満ちたアルバムに仕上げていますね。

なかでも、J・ディラ絡みのトラックが、やはり聴きもの。
ディラが在籍していたグループ、スラム・ヴィレッジのオリジナル・メンバーのT3や、
ポストJ・ディラともいわれるワジードも参加していて、
ビート・ミュージックやジャズへの影響力の大きさも、あらためて感じ入ってしまいました。

アンプ・フィドラーのキャリアを集大成した、
いわばデトロイトのミュージック・カルチャーの40年史を凝縮したアルバムです。

Amp Fiddler "AMP DOG KNIGHTS" Mahogani Music M.M41CD (2017)
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ジャズのブラック・メシアたち ライアン・ポーター [北アメリカ]

Ryan Porter  THE OPTIMIST.jpg

カマシ・ワシントンやサンダーキャットのアルバムは壮大すぎて、
ちょっとぼくの手には余りますけれど、このアルバムにはグイと胸をつかまれました。
100分を超す2枚組の大作ではあるものの、作りこんだアルバムではなく、
気合十分なセッションを収録したら、この長さになっちゃった、てな感じがいいんだな。

ライアン・ポーターは、カマシ・ワシントンが中心となる
ロサンゼルスのジャズ・コレクティヴ、
ウェスト・コースト・ゲット・ダウンの一翼を担うトロンボーン奏者。
カマシのバンド、ザ・ネクスト・ステップのメンバーでもあります。
カマシが「地球上で、最もソウルフルなトロンボーン奏者」と大絶賛するというふれこみは、
昨年出たデビュー作より、本作の方が断然ふさわしいですね。

アルバムに録音データのクレジットがなく、ネットで調べてみたら、
いまから10年も前の、08年と09年にレコーディングされたものとのこと。
カマシ・ワシントンの実家にある地下スタジオで録音された、
まさしく「地下室セッション」で、カマシ・ワシントンのほか、
鍵盤のキャメロン・グレイヴスとブランドン・コールマンの二人に、
マイルズ・モスリーのベース、トニー・オースティンのドラムスという、
ウェスト・コースト・ゲット・ダウンやザ・ネクスト・ステップの面々が集結しています。

まだ20代の彼らが、
R&Bやヒップ・ホップのアーティストのバック・バンドで生計を立てながら、
「いまに見ていろ、オレたちだって」と、自分たちのやりたいジャズを
地下室で爆発させていた様子を、ナマナマしく記録した貴重なレコーディング・セッション。
大音量にして大音圧の、むこうみずなエネルギーが噴き出すこの熱気は、
だからなのかと、合点がいきます。

タイトルの『楽観主義者』は、オバーマが大統領となり、
黒人たちにとって明るい未来を予感できた、
08~09年の時代の雰囲気を反映したものなのでしょう。
「オバマノミクス」とタイトルされた曲では、ファンファーレのようなホーン・アレンジが、
ポジティヴな明るさを表しています。
「賛美歌作者」というゴスペルを背景とする曲がある一方で、
ヒップ・ホップを通過したファンクがあるなど、
時代と向き合ったこの世代の若者ならではの音楽性が花開いています。

2枚目は、フレディ・ハバード、ジョン・コルトレーン、キャノンボール・アダレイの曲
(ジャケットとレーベルはハバードとコルトレーンの曲が入れ違い)をカヴァーした
怒涛のハード・バップ。ここで繰り広げられるブラックネスは強烈です。
カマシのブチ切れたブロウに、熱くならないジャズ・ファンはいませんよね。
ハード・バップが古めかしく響かないのは、誰からの制約を受けることもなく、
自分たちがやりたい音楽を存分に演奏しているからでしょう。
やがて成長し、ジャズ・シーンにおけるブラック・メシアとなりおおせた彼ら。
その前夜を記録した、歴史的なセッションです。

Ryan Porter "THE OPTIMIST" World Galaxy WG010 (2018)
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ベロ・オリゾンチのジャズ・シーンから ブルーノ・ヴェローゾ [ブラジル]

Bruno Vellozo.jpg

ブラジルの新人ジャズ・ピアニスト、デアンジェロ・シルヴァのデビュー作を、
いまだ飽くことなく愛聴中であります。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2018-02-11
あのアルバムほど、1曲1曲がすべて違う構成とリズムの楽曲を集めた作品も珍しく、
スリリングな展開やソロの組み立ての派手さ加減には、もうヤラれっぱなし。
ソロイストでは、フェリーピ・ヴィラス・ボアスのギターに注目したんですが、
そのフェリーピが参加している新作が出たというので、早速買ってきましたよ。

それがこのベーシスト、ブルーノ・ヴェローゾの初リーダー作。
ドラムスのフェリーピ・コンティネンティーノ、サックスのブレーノ・メンドーサと、
メンバー全員、ベロ・オリゾンチを拠点に活動する若いミュージシャンたちで、
いまやブラジルの新しいジャズは、
ベロ・オリゾンチがサンパウロと並ぶ一大拠点となりましたね。

デアンジェロ・シルヴァのデビュー作に比べると、
こちらはもっとぐっと落ち着いた演奏内容といえるでしょうか。
派手さはないかわりに、
メンバーそれぞれのサウンドのブレンド具合が聴きどころです。
主役のブルーノ・ヴェローゾの重量感のある乾いたベース音、
マルクス・アブジャウジのローズの華やかな響き、
そしてフェリーピ・ヴィラス・ボアスのスモーキーなトーンが、
鮮やかなバランスで、それぞれの個性を主張しています。

グループが生み出すサウンドのなかで、
メンバーがソロイストとバッキングという関係を作らずに、
各自の弾くフレーズが絡み合って、グループ全体の即興を生み出す心地よさが
まさにイマドキのジャズらしさですね。
細かく刻んでいくドラムスのビート・センスもまた、
エレクトロニクスを通過した若い世代ならではです。

それにしても、シーンが活気づくと、ジャケットのセンスも上がりますねえ。
デアンジェロ・シルヴァのアルバムと並び、
部屋に飾っておきたくなる、いいデザインです。

Bruno Vellozo "ACREDITAR" no label no number (2018)
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インドネシアのレトロ・ポップ ノナリア [東南アジア]

NonaRia.jpg

パッケージの洒落たイラストレーションに思わず手に取ると、
裏側から見開きとなっている変型ジャケットの中には、
メンバー3人それぞれと全員のイラストが描かれた4枚のミニ・ポストカードに、
四つ折りの歌詞カードが封入されていました。
これだけでも、パッケージ好きにはニコニコしてしまうんですが、
ステキな音楽までもれなく付いているんだから、なんて嬉しいんでしょう(←倒錯)。

スネア・ドラムを叩きながら歌うヴォーカルに、
ヴァイオリンとアコーディオンのインドネシアの女性3人組、ノナリアのデビュー作です。
SP時代を思わせる古めかしいモノラル録音で、
20年代のラグタイムやスウィング・ジャズをベースとした音楽をやっています。

13年の結成当初から、メンバー一人だけが変わり、
新加入したヴァイオリンのヤシンタは、ジャカルタ交響楽団のメンバーだとか。
齢の異なるメンバー3人のキャラ立ちもよろしく、
なんともユニークな音楽性を持ったグループです。

全8曲、わずか24分という短さですが、
どれも心がほっこりと温かくなる、ハッピーな曲ばかり。
これがすべてメンバーのオリジナルだというのだから、。驚かされます。
ノスタルジックなワルツや、ほがらかなスウィングのメロディには、
イラマ・トリオが活躍した50年代インドネシアのジャズ歌謡センスが蘇るようで、
国際都市ジャカルタの歴史の深淵を、垣間見る思いがします。

NonaRia "NONARIA" BandTemenLoe/Demajors no number (2017)
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レコードの秘境 南海歌謡コンカニ音楽 [南アジア]

Tops and Pops in Konkani Music.jpg   Alfred Rose & Rita Rose.jpg

評判の映画『さすらいのレコード・コレクター~10セントの宝物』を観てきました。
主役のジョー・バザードといえば、戦前ブルースや
アメリカン・ルーツ・ミュージックのファンにはよく知られたコレクターで、
最後のSPレーベルとして話題を呼ぶフォノトーンを主宰して、
自身が所有するSP盤をリイシューしている、度外れたレコード・コレクターです。

期待して映画館に足を運んだんですけれど、う~ん、アテが外れたかなあ。
この映画が捉えていたジョー・バザードは、コレクターとしてはフツーの姿ですよねえ。
レコード・ハンティングのためにここまでするのかみたいな意外性はまったくなく、
物足りなく思えたのは、
ぼくがクレイジーなコレクターを知りすぎているからかもしれません。

アフリカや東南アジアにレコード・ハンティングに出かけていって、
炎暑の倉庫の中、動物の糞尿をものともせず、汗まみれになりながら、ネズミや虫と格闘し、
脱水症状になるのもいとわず、レコードを掘り続けるようなイカれたコレクターに比べたら、
ジョー・バザードはきわめてマットーというか、常識的なコレクターに見えます。

もっといえば、コレクターの世界では、レコードなんてスケールが小さくて、
アートや骨董の世界に目をやれば、名家の財産を食いつぶしたり、
征服した未開地から略奪した品で博物館を建てたりと、
ケタ違いのもっと生臭い物語が、ざっくざくありますからねえ。
この映画より、最近読んだ本『伝説のコレクター 池長孟の蒐集家魂』
(大川勝男著 アテネ出版社)の方が、はるかにエキサイティングでした。

生涯を南蛮画蒐集に心血注いだ池長孟の物語を読んでいて、
あ~、誰か、インドのゴアでレコ掘りしてきてくれないかなあなんて、
つい連想しちゃいましたよ。

長い間ポルトガルの植民地だったゴアに、
インド音楽とはまったく異質の南海歌謡音楽が存在することを知ったのは、
70年代末に入手した2枚のインド盤LPがきっかけでした。
コンカニ語で歌われるその歌は、その後に知ったインドネシアのオルケス・ムラユを思わす、
魅惑の南洋歌謡そのもので、いっぺんでトリコになりました。

オルケス・ムラユは、ワールド・ミュージック・ブームで復刻が進んだものの、
コンカニ音楽はまったくかえりみられないままで、
ぼくにとっては、30年近くずっとナゾの音楽であり続けました。

これほどエキゾティックな歌謡はほかにないんじゃないかというサウンドは、
8分の6拍子など3拍子系の独特のリズムにのせて、スパイシーな香りを放つもの。
そのリズムは、マレイシアのジョゲットやスリ・ランカのカフリンニャにバイラ、
さらにはインド洋音楽のセガとも繋がり、
ポルトガルが海上覇権を確立するために、
貿易拠点となる都市を制圧してきた歴史を映したものといえます。
そのポルトガルが海上帝国の中心都市としたゴアは、
ポルトガルの植民地として1974年まで占拠され続けました。

KONKANI SONGS  MUSIC FROM GOA - MADE IN BOMBAY.jpg

ポルトガル植民地時代のゴアに花開いたコンカニ音楽は、
09年にドイツのトリコントが往年の録音をコンパイルして、
ようやくその正体がみえかけたものの、リイシューされたのはその1枚きり。
70年代末に偶然ぼくが見つけたLPの主、アルフレッド・ローズは、
50年の活動期間の間に6000曲もの作品を残した重要人物ということがわかりましたけれど、
宝の山は、今だスリ・ランカのカフリンニャと同じく、眠ったままなのであります。

[LP] V.A. "TOPS AND POPS IN KONKANI MUSIC" EMI ECSD2397
[LP] Alfred Rose & Rita Rose "ALFRED ROSE & RITA ROSE" EMI ECSD24
V.A. "KONKANI SONGS : MUSIC FROM GOA - MADE IN BOMBAY" Trikont 0395
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バイユー・ソウル デュランド・ジョーンズ&ジ・インディケーションズ [北アメリカ]

Durand Jones & The Indications.jpg

ソウルフル。
掛け値なしに、この言葉がふさわしいシンガーですね。
ルイジアナの片田舎に生まれ、
幼い頃から教会でゴスペルを歌ってきたというのだから、
まさに生まれるべくして生まれたバイユー・ソウル・シンガーとういうわけです。

インディアナ大学時代に、ドラマーのアーロン・フレイザーと
ギタリストのブレイク・ラインに出会い、3人で曲作りをしながら、
演奏活動をしてきたとのこと。
白人4人組のインディケーションズが生み出すサウンドは、
往年のスタックスをホウフツとさせるもの。

オルガンやホーン・セクションの鳴り、ギターのフレージング、ドラムスのブレイクに、
4トラック録音かと思わせるような音質、
どこを取ってもバック・トゥ・シックスティーズなレトロ・サウンドに、
もう涙が止まりませーん、てなほどカンゲキしてしまったんですが、
ただの懐古趣味に終わらない、このイキイキとした音楽の表情はどうですか。

デュランドの若いからこその真摯な熱唱、
その歌いっぷりから溢れ出るパッションが、まっすぐ聴く者の胸に飛び込んできます。
インディケーションズの面々が生み出すサウンドも、
往年のソウル・サウンドを消化しきったうえで、
自分たちの音楽として再生産しているからこそ、模倣を超えた説得力を持つのでしょう。
ディープ・サウスのソウル・ミュージックは、半世紀の時を経て伝統音楽化し、
世代を超えた共通財産になった、といえるのかもしれません。

Durand Jones & The Indications "DURAND JONES & THE INDICATIONS" Colemine CLMN12013 (2016)
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サヘル・フォークからソンガイ・ブルース・ロックへ シディ・トゥーレ [西アフリカ]

Sidi Touré  TOUBALBERO.jpg

ソンガイのシンガー・ソングライター、シディ・トゥーレの新作が届きました。
前作から少し間が空いて、5年ぶりとなったアルバムですけれど、
今回もスリル・ジョッキーからのリリースです。

これまでのサヘル・フォークなサウンドとは一新、
リズム・セクションを導入し、エレクトリックなサウンドにガラリと変わりました。
タル・ナシオナル顔負けの、エネルギッシュなソンガイ・ロックです。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2018-02-27

エレクトリックなサウンドにはなったものの、
エッジの立ったンゴニの響きは、前作と変わりありません。
シディが見出した若き天才ンゴニ・プレーヤー、カンジャファが、
今回も大活躍とばかり思いこんでいたら、
クレジットをよくよく見れば、そこにあるのは別人の名前。
カンジャファは、ユニークなマンデ・スウィングでソロ・デビューしたので、
独立したのかな。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2017-11-01

後任のンゴニ奏者ウスマヌ“パプ”ダニョンのプレイも、
カンジャファばりの粒立ちの良い弦さばきで、
アンプリファイドしたンゴニをぱきんぱきんと、ハギレよく奏でています。

急速調の曲が中心で、
かつてのような滋味に富んだソンガイ・ブルースの雰囲気とは違いますが、
新たなエネルギーがソンガイのフォークロアをベースとした歌に宿されて、
フレッシュな輝きを放っていますよ。

Sidi Touré "TOUBALBERO" Thrill Jockey THRILL442 (2018)
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グローバル時代の南ア・ジャズ マブタ [南部アフリカ]

Mabuta.jpg

南アからも、世界同時多発する新しいジャズが聞こえてきましたよ。
ロンドンで活躍するサックス奏者シャバカ・ハッチングスが、
初のリーダー作で南ア・ジャズの若手たちと共演して話題を呼んだように、
グローバルな共通言語を持った若手たちが、新たな南ア・ジャズをクリエイトしています。

ケープ・タウン出身のベーシスト、シェーン・クーパーが送ってきた、
彼の新しいバンド、マブタの新作もそのひとつ。
シェーン・クーパーは、カイル・シェパード・トリオのベーシストとして16年に来日し、
反復フレーズを展開するグルーヴ・センスに、抜きんでた才能をみせてくれましたが、
なんと彼はビートメイカーとしても活躍しているそうで、
あとでそれを聞き、なるほどぉと、深くうなずいたものでした。

そんな多彩な才能を持つシェーンがリーダーとなり、
昨年ジョハネスバーグで立ち上げたのが、このマブタ。
なんとバンド名は日本語の「瞼」から取ったんだそうで、
バンド結成から間をおかずに、デビュー作を完成させましたよ。

マブタは、シェーン・クーパーのベースに、
テナー・サックス、トランペット、ピアノ、ギター、ドラムスの6人組。
おおっ、ピアノにボカニ・ダイアーが起用されていてるじゃないですか。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-11-22

ボカニは2曲目で早速、親指ピアノを模したピアノの弦をミュートしたプレイを聞かせます。
バックでシャカシャカと刻むパーカッションは、ホショを意識したものでしょう。
こういうところに、ちゃんとアフリカ音楽のエッセンスが生きてますよねえ。
この曲には、シャバカ・ハッチングスもゲスト参加しているんですけれど、
ボカニ・ダイアーのプレイで、完全に影が薄くなっちゃいましたね。

他にも、カイル・シェパードとも共演しているバディ・ウェルズのテナー・サックスに、
アルトとバリトンの3管がゲスト参加した5曲目のアフロビートや、
7曲目のエチオ・ジャズなど、それぞれ異なるカラーリングを持った楽曲が並び、
シェーン・クーパーの作編曲能力の高さは、まさしくグローバルなジャズのクオリティ。

日本盤がリリースされることなど皆無だった南ア・ジャズですけれど、
本作は日本でもリリースされるというのだから、
グローバル化もまんざらじゃありませんね。

Mabuta "WELCOME TO THIS WORLD" Kujua no number (2018)
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イディッシュ・コメディ ミッキー・カッツ [北アメリカ]

10 Mickey Katz.jpg   01 Mickey Katz And His Orchestra.jpg
02 Mish Mosh.jpg   03 Katz Puts On The Dog.jpg
04 Plays Music For Weddigs, Bar Mitzvahs And Brisses.jpg   05 The Most Mishige.jpg
06 Katz Pajamas.jpg   07 Comin’ Round The Katzkills.jpg
08 The Borscht Jester.jpg   09 Sing-Along With Mickele.jpg

ミッキー・カッツが素晴らしいクラリネット奏者であったことは、
90年代のドン・バイロンによる再評価で知ったクチですけど、
コメディアンとして一世を風靡したというカッツの歌は、その後だいぶたってから、
カッツのキャピトル盤LPをまとめて入手して、ようやく知りました。
このあたりの音源は、ほとんどCD復刻が進んでいませんね。

カッツが冗談音楽のパイオニア、スパイク・ジョーンズのシティ・スリッカーズに
在籍していたというのもナットクの歌いっぷりに、ただただ唖然。
英語とイディッシュ語をちゃんぽんにしたコミカルな歌や、
曲中クレズマーのパートを何度も挿入して、場面をがらりと変えるアレンジは、
効果音で形態模写をするスパイク・ジョーンズとは、
また違う音楽性を持った芸人さんだったことがわかります。

英語やイディッシュ語がわかれば、
もっとカッツのお笑い芸の面白さがわかるんでしょうけどねえ。
アルバム・タイトルからして、黒田晴之さんの『クレズマーの文化史』によれば、
「しっちゃかめっちゃか」(MISH MOSH)だの、
「めっちゃバカ」(THE MOST MISHIGE)というのだから、
どれだけ笑えるものだったのやら、う~ん、言葉の壁の厚さがもどかしい。
日本語がわからない外国人が、トニー谷を聞いてるようなもんざんす。

とはいえ、音楽を聴いているだけでも、
1曲の中で、アメリカのポピュラー・ミュージックと
クレズマーが入れ替わる面白さに、おなかがよじれます。
素っ頓狂な場面展開に、ヴェトナムのカイルオンやミャンマーのミャンマータンズィンを
思い浮かべるのは、ワールド・ミュージック・ファンの性(さが)でしょうか。
ハヤりものならなんでも見境いなく取り込む、芸能音楽のタフな雑食性に、
ミッキー・カッツの本領が発揮されています。

[EP Album] Mickey Katz "BORSCHT" RCA EPB3193
[LP] Mickey Katz "MICKEY KATZ AND HIS ORCHESTRA" Capitol T298
[LP] Mickey Katz "MISH MOSH" Capitol T799 (1957)
[LP] Mickey Katz "KATZ PUTS ON THE DOG!" Capitol T934 (1958)
[LP] Mickey Katz "PLAYS MUSIC FOR WEDDINGS, BAR MITZVAHS AND BRISSES" Capitol T1021 (1958)
[LP] Mickey Katz "THE MOST MISHIGE" Capitol T1102 (1958)
[LP] Mickey Katz "KATZ PAJAMAS" Capitol W1257 (1959)
[LP] Mickey Katz "COMIN’ ROUND THE KATZKILLS" Capitol W1307 (1959)
[LP] Mickey Katz "THE BORSCHT JESTER" Capitol T1445 (1960)
[LP] Mickey Katz and “Der Ganser Gang” "SING-ALONG WITH MICKELE" Capitol T1744 (1962)
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キューバン・クレズマー ロナルド・フアン・ロドリゲス [カリブ海]

Roberto Rodriguez  TIMBA TALMUD.jpg

ジョン・ゾーンのレーベル、ツァッディークから、
キューバ音楽のアルバムが出ていたなんて、知りませんでしたねえ。
ハバナ出身の作曲家でパーカッショニストのロナルド・フアン・ロドリゲスのアルバムが、
「ラディカル・ジューイッシュ・カルチャー」シリーズから、
4作出ていることに気づいたんですが、
そのうちの09年作“TIMBA TALMUD” が素晴らしいんですよ。

キューバ音楽にクレズマーのメロディを融合させた作品と、
一言で言ってしまえば、それで終わりなんですが、
その音楽の魅惑的なことといったら、悶絶もので、
エキゾティズムこれに極まれりといったアルバムに仕上がっています。

主役のロナルド・フアン・ロドリゲスのパーカッションに、クラリネット、ヴァイオリン、
ピアノ兼アコーディオ兼オルガン、ベース、コンガ兼ボンゴの6人編成で、
曲によって、ギター、フルート、トランペット、トレスの4人がゲスト参加しています。

主役のロナルド・フアン・ロドリゲスって、どういう人なのかと思いきや、
マーク・リーボウと偽キューバ人たちの一員だった人なんですね。
えぇ?と思って、話題を呼んだ98年と00年の両方のアルバムを
引っ張り出してみたら、なるほどドラムス、パーカッションを担当していました。

ツァッディークにつながるのも、マーク・リーボウとやってた人なら、
なるほど不思議じゃないですね。
父親のロベルト・ルイス・ロドリゲスがプロのトランペッターで、
父親とともに13歳の時からカチャーオのバンドで演奏してきたというのだから、
輝かしい経歴の持ち主です。

クラリネットはクレズマーを奏でるのにはなくてはならないし、
ヴァイオリンはチャランガのムードを醸し出すのに絶好という楽器の選択も確かで、
ゲストのエレクトリック・ギターのエフェクトが、さらに妖しさを増しています。
ロナルドが書く曲も、ソン・モントゥーノ、グアラーチャ、チャチャチャ、
ダンソーン、ボレーロ、メレンゲとカラフルで、1曲他人の曲をやっているのが、
アルジェリア、オラン生まれのユダヤ系ピアニスト、
モーリス・エル・メディオニの名曲「オラン・オラン」というのも、見事にハマってますね。

Roberto Rodriguez  EL DANZON DE MOISES.jpg

あまりの完成度にびっくりして、
05年作の“EL DANZON DE MOISES” も聴いてみたんですが、
こちらはよりダンソーンなど古風なスタイルを中心にやっていて、ベクトルはおんなじ。
より完成度をあげたのが、09年作といえそうなんですけれど、
こちらはピアノがクレイグ・テイボーンだってところに、
おおっという反応を示す人がいるかな。
09年作のメンバーとは一人もカブっていなくて、
トランペッターのお父さん、ロベルト・ルイス・ロドリゲスが参加しています。

キップ・ハンラハンみたいなハイブリッドな音楽が苦手な当方には、
キューバ音楽とクレズマーを素直に融合させた、その実直さに共感を持ちます。
だからこそ、世間の注目は浴びないわけなんだけど、出会えてよかった。
これまで話題にすらならなかったキューバ音楽の異色作、大事な愛顧盤になりそうです。

Roberto Rodriguez "TIMBA TALMUD" Tzadik TZ8140 (2009)
Roberto Rodriguez "EL DANZON DE MOISES" Tzadik TZ7158 (2005)
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